
イメージ図 by ゴルフクラブインサイツ
中尺・長尺パターの打ち方や作り方について調べていると、何から始めればいいのか迷いやすいものです。
この記事では、中尺パターと長尺パターの打ち方をわかりやすく解説し、それぞれのメリットやデメリット、どんな人に合うのかも整理します。
ルールに関するなぜ禁止という疑問や、長さを身長とどう合わせるか、さらに普通のパターにグリップ交換を施す作り方、おすすめグリップの選び方まで一気にカバーします。
迷いがちな基礎から実践、道具の調整までを一直線につなげ、すぐ試せる具体策を提示します。
✅中尺・長尺の打ち方と狙いどころが理解できる
✅ルール改正の背景と適正な構え方がわかる
✅身長別の長さ選びと作り方の段取りを把握できる
✅普通のパターにグリップ交換する際の注意点を知る
中尺・長尺パターの打ち方を徹底解説
- 中尺・長尺パターの基本的な打ち方を理解しよう
- 中尺や長尺のメリット・デメリットを整理
- 中尺と長尺:それぞれ合う人の特徴
- あの長尺パターは禁止?なぜルール改正になったのか
中尺・長尺パターの基本的な打ち方を理解しよう

イメージ図 by ゴルフクラブインサイツ
中尺・長尺はいずれも通常より視点が高くなるため、ターゲットラインを俯瞰しやすいのが特長です。中尺パター(おおよそ37〜41インチ)では前傾を浅めにし、両肘は軽く曲げ、脇は「締めすぎず・開きすぎず」の中庸を保つと体幹が安定します。
目線はボールのわずか内側に置くと、ストローク軌道のブレを抑えやすくなります。ストロークは肩主導の振り子イメージを基調に、左手を完全固定の支点にしすぎず、右手はフェース向きを乱さない程度に軽く添えると、出球方向が揃いやすくなります。
「真っ直ぐ引いて真っ直ぐ出す」を過度に意識しすぎると硬直しやすいため、ヘッドが自然に往復できるテンポ(おおむねバックスイング:ダウン〜フォロー=2:1のリズム)を優先すると再現性が向上します。
長尺パター(46〜50インチ前後)はクラブ全体の慣性が大きく、始動でヘッドが動きにくいと感じるのが一般的です。テークバック直前にフォワードプレスを小さく入れ、左手をターゲット方向へ数ミリ「押し出す」イメージを作ると、てこの原理でヘッドがスムーズに引きやすくなります。
インパクトはストローク最下点のわずか先(わずかなアッパー)でとらえると順回転が安定し、打音と打感も揃い始めます。なお、アンカリング(クラブや握っている手、または前腕を身体に固定して支点化する行為)は規則で禁止されています。
長尺・アームロックを使う場合でも、グリップエンドや前腕を身体に圧着させないよう配慮してください(出典:R&A Rules of Golf Rule 10.1b Anchoring the Club)。
下表は、長さ別の基本セットアップと打点の目安をまとめたものです(数値は一般的な範囲の目安です)。
種別 | おおよその長さ | 目線位置の目安 | ボール位置の目安 | インパクト軌道の目安 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
短尺(参考) ⛳️ | 33〜35 in | 👁️ ボール直上〜わずか内側 | 🎯 中央付近〜気持ち左寄り | ➿ 最下点前後でヒットしやすい | ⚙️ 取り回しに優れ、細かなタッチを出しやすい |
中尺 🏌️ | 37〜41 in | 👁️ ボールのやや内側で俯瞰しやすい | 🎯 中央〜わずか左 | ➿ 最下点の少し先でとらえて順回転を作る | ⚙️ 俯瞰性と安定性のバランスがよく、ショートパットに強い傾向 |
長尺 🧭 | 46〜50 in | 👁️ ボールの内側寄りで視点が高め | 🎯 中央〜ごく軽く左 | ➿ 最下点のわずか先でヒットする意識 | ⚙️ 始動は軽いフォワードプレスが有効で再現性を確保しやすい |
アームロック専用ヘッドはロフトが5.5〜7度程度に設定されることが多く、ハンドファーストなロフト実効値を補正します。標準ヘッドのロフトは3〜4度が目安で、ストローク最下点の先でわずかにアッパーに当てると順回転を得やすくなります。
いずれの場合も、フェース向き(インパクト時のフェース角)が方向性の約8割を決めるといわれるため、肩の回転軸とフェースの一体感を優先しましょう。
長尺・中尺はヘッド重量やグリップのカウンターバランスの影響を受けやすいため、テンポが速すぎるとフェースが戻り切らず、遅すぎると減速インパクトになりがちです。
練習では一定テンポのメトロノーム(例:60〜70BPM)に合わせ、同じストローク幅で5球連続して同距離に止める「ディスタンスブロック練習」を取り入れると、距離と方向の許容誤差が収束しやすくなります。
代表的な握り方のバリエーション
グリップ余らせ
17インチ前後の長グリップを下寄りで握り、上部を余らせてカウンターバランスを得る
このスタイルはグリップ上部の余剰重量がカウンターとして働き、手首の不要な回内外を抑えやすくなります。握り幅は両手の間に拳1個分程度の距離をつくると、右手の過干渉を抑えつつ、左右の役割(左は軌道ガイド、右は押し込み)を分担しやすくなります。
ストロークは肩主導で、右手はフェース面を「運ぶ」感覚に留めるとヘッド挙動が安定します。導入初期はロングパットがややオーバー傾向になりやすいので、ストローク幅を小さく保ち、テンポ一定を優先するとタッチが早く整います。
アームロック
左前腕に沿わせるスタイル(前腕を体に固定しない前提)。ハンドファーストが強くなるためロフト大きめの専用設計が適合しやすい
前腕とグリップを一直線に保つことで手首の角度変化を抑制し、フェースの開閉を最小化できます。アドレスでは左肘が伸び切ってロックし過ぎないよう注意し、左肩を回転軸とする意識を強めると、上下動の少ないストロークが作れます。
ロフトが増す専用ヘッドを選ぶと、ハンドファーストでも初速と転がりが安定しやすくなります。規則上は前腕の身体固定がアンカーと解釈されないよう、前腕はあくまでクラブに沿わせるだけに留め、身体への圧着を避けることが肝要です。
クロスハンド/スプリット
右手上や両手離しで右手の過剰介入を抑え、ショートパットの安定性を高めやすい
クロスハンド(右手上)では、右手首の甲が目標方向を向きやすく、フェース向きの管理が直感的になります。スプリットは両手の間隔を広げることでストロークの支点が左右の中間にでき、ヘッドを直線的に動かしやすいのが利点です。
いずれもテークバック初動は左肩で「押す」意識に寄せ、フォローでは右手で「運ぶ」程度に留めると、打点の上下ブレが減ります。スプリット時は両手の間隔を広げすぎるとストローク途中の力点が移動しやすいので、まずは拳1〜1.5個分から始めて微調整するのがおすすめです。
以上の型はいずれも、肩主導と一定テンポが鍵です。フェース向き(インパクト時のフェース角)と打点の再現性が高まるほど、ライン乗りと距離の誤差が収束し、実戦での入射角や初速のムラが減っていきます。
中尺や長尺のメリット・デメリットを整理

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中尺・長尺に共通する利点は、慣性モーメント(MOI)が大きくなることで手先の余計な動きが抑えられ、インパクトでゆるみにくい点です。
視点が高くなることでラインの立体把握がしやすく、特に1〜2メートルのプレッシャー下でも、振り子テンポを保ちやすくなる傾向があります。前傾が浅まるため、長時間の練習やラウンドで腰背部の負担が軽減されると感じる例も少なくありません。
一方で、課題は距離感のチューニングです。ヘッド重量が重いモデルや総重量が大きい組み合わせでは、導入初期にロングパットがオーバー傾向になりやすく、速いグリーンでタッチ合わせに時間がかかることがあります。
また、取り回しは短尺より劣り、キャディバッグ内での収まりや移動時の扱いに煩わしさを覚える場合もあります。さらに、アンカリングの規則順守という注意点が常に付きまといます。
長尺・アームロック・グリップ余らせのいずれも、身体への固定とみなされない握り・構えを設計し、競技環境でも自信を持って使用できるフォームを確立しましょう。
導入をスムーズにするための実践的な調整ポイントを整理します。
-
スイングウェイトとカウンターバランス
総重量が増えるとテンポが乱れやすくなります。グリップ余らせの場合は上部の重さがカウンターとして作用するため、ヘッドの効きすぎを抑えやすい一方、過度に重い上部は始動で手元が遅れやすくなります。ストロークが重く感じるときは、ストローク幅を5〜10%小さくし、テンポ一定で初速を合わせるアプローチに切り替えると良いでしょう。 -
距離感のキャリブレーション
練習グリーンで3m・6m・9mの基準点を設け、ストローク幅を「ヘッドの移動量」で可視化します。例として、3mをグリップ幅1個分、6mを1.5個分、9mを2個分といった基準を写真や動画で記録しておくと、当日のグリーンスピードに対する補正が素早く行えます。導入初期はロングでショートさせる「安全側の誤差」を意図的に選び、1ラウンドの3パットを減らす運用が現実的です。 -
規則対応のフォーム点検
アームロックや長尺で身体への圧着が疑われやすい構えは、第三者視点の動画でチェックします。前腕やグリップエンドが衣服の皺を押しつぶすほど密着していないか、ストローク中に接触圧が変化していないかを確認し、誤解の余地を減らしましょう。
導入初期に起こりやすいミスと対処を、簡潔に一覧化します。
よくある現象 | 想定される原因 | 対処のヒント |
---|---|---|
ロングが常にオーバー ⛳ | ヘッドが重いことや総重量増で初速が出やすく、振り幅そのものが大きくなりがち | ストローク幅を一段階小さくし、メトロノーム感覚でテンポ一定を優先。 グリップ圧は10段階中3〜4程度まで緩めて手先の加速を抑える |
1〜2mで右に外す 🎯 | インパクト直前の右手の押し込みでフェースが開き、始動方向が右へ出る | 右手は「添える」に徹し、始動は左肩で作る。 フォローは低く長く出して、フェース向きを保ったままラインに沿わせる |
芯を外し打感がバラつく 🎧 | ストローク中に上下動が入り、最下点とインパクトの位置がズレて打点が不安定 | 前傾は浅めをキープし、視線はボールのわずか内側へ。 最下点の少し先で当てるイメージを強めて、打痕をフェース中央に集める |
ルール違反が不安 ⚖️ | アンカリングの定義を誤解し、体への圧着や固定に該当しないか判断が曖昧 | グリップエンドや前腕を身体に押し当てないフォームに修正。 R&AおよびUSGAのアンカリング規定を確認し、判定基準に沿ってセルフチェック |
要するに、中尺・長尺は「ストローク安定性と引き換えに、距離感と取り回しへ適応期間が必要」という構図です。テンポ一定・フェース管理・規則順守の3点を軸に、小さな成功体験(3パット激減、1〜2mの成功率向上)を積み上げると、移行コストは短期で回収しやすくなります。
中尺と長尺:それぞれ合う人の特徴

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どちらを選ぶかは「いま抱えているミスの傾向」と「体格・体調」「プレー環境(グリーンスピード)」の交点で判断すると迷いにくくなります。
中尺は37〜41インチ域、長尺はおおむね46インチ以上が目安で、いずれも視点が高くなりストロークの振り子化が促されますが、得手不得手が明確に分かれます。
中尺が合いやすいのは、通常長のパターで手先の介入が強く、方向ブレ(フェース角の戻り遅れ)やイップス傾向が出やすいケースです。
前傾を深く作れない体格・体調の人でも、浅い前傾で肩主導の直線的なイメージを描きやすく、1〜2mのラインでインパクトの緩みが減りやすくなります。ストレート軌道を意識したい人、アークが大きくなりがちな人とも相性が良好です。
長尺は、ショートパットでの緊張が強い人、より直立姿勢で打ちたい人、腰や背中への負担を減らしたい人に向きます。クラブの総慣性が大きいぶん、意図せぬ手首操作が入りづらく、ルーティンに集中しやすいのが特徴です。
規則の範囲内で安定性を最大化したい競技志向のゴルファーに支持があり、特に下りの速いラインでの減速インパクトを防ぎたい場面で効果を感じやすくなります。
適合度を素早く見積もるための整理表を用意しました。数値はあくまで目安ですが、フィッティング時の指針になります。
現状の症状・環境 | 合いやすいタイプ | 根拠・ねらい |
---|---|---|
🎯 1〜2mで左右に出球が散る(フェース角が安定しない) | 中尺 | 肩主導の直線イメージを作りやすく、手首の回内外を抑えてフェース向きのばらつきを小さくする狙い |
⚡ ロングでパンチが入りやすく初速が揃わない | 長尺 | クラブ全体の慣性を利用して減速インパクトを回避し、一定テンポでヘッドスピードを均しやすくする |
🧍 前傾が深いと腰がつらい・低い視点でラインが読みづらい | 中尺/長尺 共通 | 浅い前傾と高い視点を取りやすく俯瞰性が向上。姿勢の負担を減らしつつライン全体を把握しやすくする |
🏁 速いグリーン(スティンプ10.5以上)でオーバーが続く | 中尺寄り | 総重量を抑えやすく振り幅とテンポの管理がしやすい。初速過多を避け繊細なタッチに合わせやすい |
🐢 遅いグリーン(スティンプ9以下)でショートが多い | 長尺寄り | ヘッド慣性の恩恵でゆるみを抑え、インパクト初速を安定化。距離不足を解消しやすい |
🔄 アークが大きく打点が散りやすい | 中尺 | 真っ直ぐ引いて真っ直ぐ出すイメージを作りやすく、入射とミート位置の再現性を引き上げる |
😖 極度のプレッシャー下で手が止まりやすい | 長尺 | 始動ルーティンを固定化しやすく、クラブ慣性の助けでオートマチックに振り切れる環境をつくる |
選択後の「慣れ」の期間も計画に入れてください。中尺は1〜2週間、長尺は2〜4週間程度の再学習期間を見込むと現実的です。
日々の練習では、メトロノーム(60〜70BPM)に合わせてストローク幅を固定し、3m・6m・9mの基準距離で初速と転がりの揃いを確認すると、移行の遠回りを避けられます。
いずれも、普段のストロークの癖と当日のグリーンスピードに合わせて微調整できる人ほど成果が出やすい傾向があります。
あの長尺パターは禁止?なぜルール改正になったのか

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長尺パターという道具自体は使用可能です。
ただし、2016年施行のルール改正でアンカリング(クラブや前腕を身体に固定して支点化する行為)が禁止され、ストロークの自由度(フリースイング)を担保することが求められるようになりました。
改正の趣旨は、体の一部を支点として使うことで本来のストローク再現性が過度に高まり、競技の公平性や伝統的なプレー概念を損なう点にあります。
実務レベルでは、次の3点を押さえておくと安心です。
-
グリップエンドの取り扱い
グリップエンドを胸・腹・顎などに当てて固定してはいけません。構えの静止中・動作中ともに、体とエンドの間に明確な空間(視覚的な“抜け”)がある状態を保ちます。厚手のウェアの上から圧着させる行為も避けます。 -
前腕の扱い(アームロック時を含む)
前腕を身体に押し当てて固定するのは違反です。アームロックは「前腕とグリップを沿わせる」スタイル自体は許容されますが、前腕そのものを胴体に圧着して支点化しないことが条件です。前腕と胴体の間に衣服のシワが潰れない程度のクリアランスを目視確認できる構えが安全です。 -
動的チェック(ストローク中の挙動)
アドレスで離れていても、ストローク中にグリップエンドや前腕が身体に押し付けられ、実質的な支点になってはいけません。動画で横・正面から確認し、振幅が大きい場面でも接触圧が増えていないかを点検します。偶発的に触れる程度の接触は即違反を意味しませんが、意図的に安定のため接触させていると解されうる態様は避けてください。
大会に臨む前のセルフチェックとしては、
(a)グリップエンドと体のクリアランス
(b)前腕の体への圧着がないか
(c)ストローク中に接触が強まっていないか
の3項目を動画で確認し、競技要項やローカルルールの記載も合わせて確認しておくのが実務的です。疑義が残る場合は、事前に競技委員へ相談のうえで当日の不安要素を取り除いておくと、技術面に集中できます。
中尺長尺パターの作り方:普通のパターにグリップ交換
- 身長に合わせたパター長さの選び方
- 普通のパターにグリップ交換する中尺や長尺の作り方
- 中尺パターグリップおすすめ紹介
- 長尺パターグリップおすすめ紹介
- 中尺長尺パターの打ち方とグリップ交換での作り方総括
身長に合わせたパター長さの選び方

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最適な長さは、身長だけでなく腕の長さ・前傾角・グリップ位置・視点の高さ(目線がボールに対してどこに来るか)で決まります。目線がボールの真上か、わずかに内側に入る位置に自然に収まる長さを基準にすると、フェース向きと打点が安定しやすくなります。
中尺は概ね38〜41インチ、長尺は42〜46インチ以上がひとつの目安ですが、たとえば前傾を浅く保ちたい人やアームロックのようにハンドファーストが強くなるスタイルでは、同じ全長でも実質の構えの高さが変わります。このため、カタログ値だけで即断せず、実測のアドレスとストロークで確認する手順が安心です。
長さの規則面では、クラブの最小長は18インチ、最大長は48インチとされますが、この最大長はパターには適用されないとされています。実測は60度基準面に沿ってグリップエンドからソールまでを測る方法が案内されています(出典:R&A/USGA Equipment Rules「クラブの長さの測定」)。
規則の考え方を押さえたうえで、以下の目安テーブルを参考に、実地のアドレスで微調整してください。
下の表は、直立姿勢寄りで使いたい場合の大まかな目安です。スタイルにより上下1〜2インチの調整幅を見込みます。
🧍 身長目安 | 📏 中尺推奨長さ | 📏 長尺推奨長さ | 👁️ 視点の目安 |
---|---|---|---|
160cm未満 | 37〜39インチ | 42〜44インチ | 🔭 視点をやや高めに保ち、ライン全体を俯瞰 |
160〜170cm | 38〜40インチ | 44〜46インチ | 🎯 ボール位置の内側に目線を置き狙いを確立 |
170〜180cm | 39〜41インチ | 45〜47インチ | 🧭 やや直立でも体軸が安定しやすい構え |
180cm超 | 40〜41インチ | 46〜48インチ | 📐 長さで無理なく直立姿勢をキープしやすい |
迷ったら、普段のパターに近い目線感覚を優先させると移行がスムーズです。アームロックではハンドファーストが強くなるため、同一全長でもグリップ位置が相対的に高くなり、実効的な「長さの感じ」が変化します。
加えて、ヘッド重量やグリップ重量の差でスイングテンポも変わります。一般的に、標準パターのヘッド重量は350〜370g、中尺・長尺では380〜420g(アームロック系はさらに重め)・ロンググリップは100〜150gの範囲が多く、総重量やバランスの違いがストロークの“重さ”として伝わります。
フィッティング時は、(1)目線位置、(2)前傾角、(3)ソールの座り、(4)テークバック始動の軽さ、(5)最下点の位置の5項目をチェックポイントに、3m・6m・9mの基準距離でタッチの再現性を確認すると判断材料が揃います。
すり合わせのコツ
・前傾が深くなると目線は内側に入りやすくなるため、長さを短くしすぎない
・「目線わずか内側」でも、フェース面の上下打点が安定していれば問題なし
・速いグリーンでは長さを伸ばして直立寄りにすると、オーバーを招きやすい場合があるため、ストローク幅のキャリブレーションを同時に実施する
普通のパターにグリップ交換する中尺や長尺の作り方

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現有パターをベースに中尺寄りの打ち味へ近づけるなら、ロンググリップ化によるカウンターバランス調整が最も安全でコスト効率の良いアプローチです。
17インチ前後のロンググリップ(重量目安100〜150g)を装着すると、握る位置の自由度が増し、上側を余らせて持つスタイルも試せます。上側の質量がカウンターとして働くため、手首の不要な回内外が抑えられ、始動の“重さ”が均されます。
一方で、ヘッド重量が軽いモデルに重いロンググリップだけを装着すると、相対的にヘッドの効きが弱まり、インパクトの初速が安定しないことがあります。
標準ヘッド(350〜360g)でそうした傾向が出た場合は、ソールやキャビティに5〜15gの鉛・着脱式ウェイトを追加して、ストローク中のヘッド慣性を補う調整が有効です。
目標は、テークバック初動でフェース面がぶれず、フォローで減速せずに“自然に出る”ところに総重量とバランスを合わせることです。
本格的に長尺化(46インチ以上)を狙う場合、通常ヘッドのまま延長すると、ヘッド重量不足でスイングバランスが破綻し、ヘッドの上下動やフェース角の戻り遅れが起きやすくなります。
長尺は専用設計の重めヘッド(400g級)や長尺前提のネック設計・ロフト設定と組み合わせた方が再現性が高く、工房でのフィッティングと同時にライ角・総重量・バランス値(いわゆる“感じ”の指標)をセットで最適化するのが近道です。
エクステンションでシャフトを伸ばす場合は、接合部の剛性やねじれ剛性の確保、総重量増に伴うテンポの変化も織り込んでください。
作業の流れ(中尺寄りのチューン例)
- 現状の総重量・バランス・長さを計測
- 17インチ前後のロンググリップへ交換
- 握る位置の最適化と打点の安定を確認
- 必要に応じてヘッドへ鉛やウェイトを追加
- 練習グリーンで距離感とテンポを再学習
上の流れを段階的に行うと、違和感を小さく移行できます。特に「握る位置の最適化」は効果が大きく、上側を1〜2インチ余らせるだけで、カウンター効果が高まりテークバックの初動が安定します。
ヘッド側の追加は一度に大きく載せず、3〜5g単位で変化を確認しながら進めると副作用(上がり軌道の過大化、出球の強すぎ)を抑制できます。
ルール適合の確認ポイント
・二重グリップ化など特殊加工を施す場合は、断面形状・位置関係が用具規則に適合しているか
・大会に出る場合は、ローカルルールや競技要項を事前に確認して疑義を解消しておく
仕上げとして、練習グリーンで3m・6m・9mの基準距離を設け、ストローク幅とテンポ(例:60〜70BPM)を合わせながら初速の揃いを確認します。
ロンググリップ化後は、総重量の増加でテンポが自然に遅れやすくなるため、メトロノームに合わせて「同一幅・同一テンポ」で5球連続を目標に揃えると、距離感の再学習が加速します。
競技で用いる場合は、最終的に動画で構えとストロークを点検し、ルール適合の範囲で余計な固定が生じていないかも併せて確認しておくと安心です。
中尺パターグリップおすすめ紹介
中尺化を狙うグリップ選びでは、全長(目安:17インチ=約432mm)、重量(約85〜125g)、断面形状(ストレート/弱テーパー)、芯径(一般的にM58・M60)といった物性がストローク感に直結します。
特にグリップを重く・長くすると手元側の慣性が増え、スイングウェイトは相対的に軽く感じやすくなります(同じヘッド・シャフト条件でグリップ質量+20gなら、体感で約1〜1.5ポイント分ヘッドの利きが弱まるイメージ)。
ここでは実用性の高い3タイプを用途別に整理します。
カウンターバランス化の定番
STM ロング(17インチクラス)
国内グリップ専業のSTMが展開する17インチ前後のロングタイプは、約100g前後の重量帯、円形断面のストレート形状が特徴です。
-
ねらい:グリップ上部を余らせて握ることで、手元側に質量を持たせるカウンターバランス効果を得やすく、肩主導の直線イメージを作りやすい
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相性:総重量520〜560g台の中尺セットアップ、ヘッド質量350〜370gクラスと好相性
-
セットアップの要点:M58芯にM60相当のテープ厚で装着すると外径がやや太くなり、面圧が安定。テープは端部の段差が出ないよう均一巻きを徹底
手元分離で再現性を高める設計
Muziik スプリット(2ピース)ロング
Muziikの二分割式ロングは、上グリップと下グリップを独立配置でき、合計長さで長尺〜中尺幅に対応できるのが強みです。
-
ねらい:左右の手の間隔を規則的に保ち、始動〜フォローでの支点ブレを抑制。ショートレンジでのフェース管理をシンプル化
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相性:ブームスティック寄りの長め運用から、分離把持でのコントロール重視運用まで幅広く対応
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セットアップの要点:二つのグリップ間は規則上1.5インチ(38.1mm)以上の間隔が必要。間隔の再現性を高めるため、シャフトに極薄テープでマーキングしてから装着すると調整が容易
取り回しを重視した中尺移行ステップ
エラストマー系・軽量ロング(17インチクラス)
軽量ロング(おおむね85〜100g)は、手元の慣性を上げ過ぎずに中尺寄りのフィーリングへ移行したい場合に有効です。
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ねらい:ヘッドの利きを残しつつ、視点の高さとストロークの直進性を両立。高速グリーンでもオーバーしにくいタッチへ調整しやすい
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相性:やや軽め(340〜355g)のヘッドや、既存の短尺パターから段階的に中尺へ寄せたいケース
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セットアップの要点:軽量ロングはスイングウェイトの変化が小さく、距離感の再学習負担を抑えられる一方、上側を余らせ過ぎると手元が浮きやすい。握り位置の再現をルーティン化する
選定フローチャート(簡易)
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ショートパットの安定最優先 → ① STM ロングで面圧と支点を安定
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テンポ一定と両手の役割分担を明確化 → ② Muziik スプリットで間隔を固定
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取り回しと距離感の移行コスト最小化 → ③ 軽量ロングで段階的に中尺化
取付け・ルール上の注意
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芯径・テープ:M58芯+標準テープ2重巻きは外径が太くなり面圧が均一化、M60芯+1重巻きはしっとり細めで繊細な面感を得やすい
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乾燥・固定:溶剤は多すぎると回り止め不良の原因。装着後24時間は養生し、トルクをかける作業は避ける
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規則適合:パターのみ2つのグリップ装着が可能ですが、いずれも円形断面で、互いの間隔は1.5インチ以上、意図的なアンカリングは禁止です
上記はあくまで代表的な仕様レンジと運用例です。最終的なフィーリングはヘッド質量・ライ角・総重量・握り位置の相互作用で決まります。
工房でのバランス計測(総重量・スイングウェイト)と練習グリーンでの距離感点検をセットで行い、握り位置・テンポ・ストローク幅をルーティン化していくと再現性が高まります。
長尺パターグリップおすすめ紹介
長尺(いわゆるブームスティック)向けのグリップは、全長19〜21インチ帯、重量120〜150g帯、断面はストレート〜弱テーパーが主流です。
手元側の質量と長さを増やすことで、ストローク中の支点が安定し、ヘッドの過剰な開閉を抑えやすくなります。一方で、グリップを重く長くすると相対的にヘッドの利きが軽く感じやすく、距離感の再学習やヘッド側のウェイト調整が必要になる場合があります。
以下では、日本の主要グリップメーカーの長尺対応プロダクト群から、用途別に特長がわかりやすい3タイプを取り上げます。なお、長尺運用ではアンカリング(体へ固定)は禁止です。
構えとストロークが規則に適合しているかを必ず確認してください。(出典:R&A/USGA Equipment Rules)
高い面圧と直進イメージを両立
Elite Grips ロングパター 21インチ級
日本のポリマー成形に強みを持つElite Gripsのロングパター用は、約21インチ級の直線的プロファイルと粘着感のある外装が特長です。
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想定スペック:全長約20.5〜21.0インチ、重量約130±10g、円形断面ストレート
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ねらい:面圧のバラつきを抑え、肩主導のストレートストロークを作りやすい。ショートパット域でのフェース管理をシンプルに
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組み合わせの目安:ヘッド質量380〜420g、総重量700g前後のブームスティック構成。ヘッド側に15〜25gのウェイトを追加し、実打で初速と転がりを微調整
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取付けの注意:M58芯で厚巻きにすると過度に太くなることがあるため、M60芯+標準巻きで外径を整え、手の小さいゴルファーでも面圧を均一化しやすい
硬めコアで捻れを抑制
IOMIC ロング/アームロック対応(19〜21インチ級)
エラストマー配合に定評のあるIOMICは、長尺・アームロック両対応レンジを用意しているのが強みです。やや硬めのコアと表面のタックが、ストローク中のねじれ感を抑えます。
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想定スペック:全長約19.0〜21.0インチ、重量約120〜145g、弱テーパー〜ストレート
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ねらい:手元が暴れやすい高速グリーンでも握圧を低めに保てる。アームロック運用では左前腕との一体感を得やすい
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組み合わせの目安:アームロックではハンドファーストが強くなるため、ロフト5.5〜7.0度のヘッドと相性良好。バランスはやや軽めに設定し、テンポ優先で距離感を合わせる
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取付けの注意:前腕に沿わせる構えでも、前腕そのものを胴体に固定しないこと。アンカリングに該当しない姿勢・運用を徹底
間隔固定で再現性を高める
CADERO 2ピース・ロング(合算21インチ帯)
CADEROの2ピース構成は、上グリップと下グリップを任意の間隔で配置できるのが魅力です。両手の距離を一定化することで、毎回の支点位置が安定します。
-
想定スペック:上+下の合算全長で約20〜21インチ、合算重量約120〜160g、上は太径、下はやや細径の組合せが一般的
-
ねらい:ショートレンジでの方向性を優先したいゴルファーに適応。始動の迷いを減らし、ヘッドの出し戻しを直感的に
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組み合わせの目安:ヘッド380〜430g、総重量710g前後。カウンターバランスを強めにする場合は上グリップを重めに選択
-
取付けの注意:規則上、2つのグリップの間隔は少なくとも1.5インチ(38.1mm)必要。間隔の再現性を高めるため、シャフトにマーキングを施してから装着する
早見比較(目安値)
🏷️ モデルタイプ | 📏 全長の目安 | ⚖️ 重量の目安 | 🧱 断面形状の傾向 | 🎯 推奨スタイル |
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Elite Grips ロング21″級 | 20.5–21.0 in 長尺運用を想定したフルレンジ | 120–140 g 手元荷重で支点の安定性を高めやすい | ストレート形状で面圧が均一になりやすい | 直線的な出し入れと短距離の再現性を狙うセットアップに適合 |
IOMIC ロング/AR対応 | 19.0–21.0 in ロングとアームロック双方に対応 | 120–145 g コア剛性で捻れを抑え握圧を低めに保ちやすい | 弱テーパー〜ストレートで前腕との一体感を得やすい | アームロック運用を含めた安定重視のストロークにマッチ |
CADERO 2ピース合算21″ | 20–21 in 上下グリップ合算で長さを最適化 | 120–160 g 上下の重量配分でカウンターバランスを調整可 | 上側太径×下側やや細めの組合せで保持点を明確化 | 両手の間隔を一定に保ち方向性を優先するプレーに有効 |
セットアップの実務ポイント
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バランス設計:グリップ+20g=スイングウェイト体感−1〜1.5pt相当の変化が目安。ヘッド側の増量か、握り位置の最適化で補正
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握圧管理:10段階で3〜4を基準に、テンポを一定化。重い総重量でも「受動の振り子」を崩さない
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最終確認:練習グリーンで3・6・9ftの距離別反復を行い、初速の揃いと転がりの質を点検。握り位置・始動ルーティン・フォローの高さを固定化する
上記3タイプはいずれも日本製の品質管理と素材設計に裏打ちされた長尺対応レンジです。
最終的な選択は、ヘッド重量・ライ角・総重量と、プレー環境(グリーンスピード、下り傾斜でのコントロール難度)を加味し、工房での計測と現場テストを往復しながら詰めると再現性が高まります。
中尺長尺パターの打ち方とグリップ交換での作り方総括
記事のポイントをまとめます。
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中尺と長尺は肩主導の振り子で方向安定を狙う
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ルール上はアンカリング禁止で体への固定は避ける
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身長と前傾に合わせて38〜48インチを目安に選ぶ
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普通のパターにグリップ交換で中尺寄りへ調整可能
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長尺は専用ヘッド併用でバランスの破綻を防ぐ
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ロンググリップは余らせ持ちでカウンターバランス
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アームロックは前腕を体へ固定しない運用が前提
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距離感は等間隔ターゲット練習で再学習する
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ショートは両足を閉じ体幹の揺れを抑えて安定
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下りはボールを前、上りは後ろへ置いてタッチ調整
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テンポを一定化し始動のきっかけを固定する
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ヘッド重量とグリップ重量の釣り合いを意識する
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工房での計測と小刻みな調整で最適解に近づける
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練習ではバックスイング量の再現性を最優先する
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スタイルとルールの両立で安心して実戦投入する
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