こんにちは、ゴルフクラブインサイツのK・Kです。
皆さんは今使っているパターの「長さ」に自信を持っていますか?「お店で一番売れていたから」「身長が170cmくらいあるから」という理由だけで、なんとなく34インチのパターを選んで使っている方が非常に多いのが現状です。
しかし、実はその何気ない選択が、あなたのパッティングの不調を招いている最大の原因かもしれないのです。パターのスペック、特に長さの選定は、ドライバーのシャフト選び以上にデリケートで、スコアに直結する重要な要素です。
自分の体格や構え方に合わないパターを使い続けることは、再現性の低いストロークを体に覚え込ませてしまうことと同義であり、腰痛などの身体的トラブルを引き起こすリスクさえあります。
この記事では、単なる身長別の目安だけでなく、生体力学的な視点から「本当に自分に合ったパターの長さ」を見つけるためのメソッドを徹底的に解説します。ご自宅にあるメジャーですぐに実践できる測り方や、長さが合わない場合の調整テクニックまで、パターの長さに関する悩みをすべて解決するための情報を網羅しました。
✅身長だけで選ぶ「34インチ標準説」がもたらす弊害と、プロゴルファーが短いパターを選ぶ理由
✅自分の腕の長さやアドレスの癖を加味した、科学的な適正長さの診断基準
✅メーカーによって異なる基準を理解し、自宅で正確にパターの長さを測る方法
✅購入後のパターを自分仕様に最適化するためのシャフトカットやバランス調整のノウハウ
パターの長さは身長で決まる?測り方の重要性

イメージ図 by ゴルフクラブインサイツ
パターの長さ選びにおいて、「身長」は確かにわかりやすい指標の一つです。しかし、それを唯一の決定打にしてしまうのは非常に危険です。なぜなら、同じ身長170cmの人であっても、腕の長さ(ウィングスパン)、股下の長さ、そしてパッティング時の前傾角度の深さは千差万別だからです。
身長が高いからといって必ずしも長いパターが必要なわけではなく、逆に小柄だからといって短いパターが正解とも限りません。まずは、一般的に流布している目安を知りつつ、なぜそれだけでは「片手落ち」になってしまうのか、そのメカニズムを深掘りしていきましょう。
身長別パター長さの目安表と33インチの選び方
まず、現在ゴルフ市場で一般的に指標とされている「身長とパター長さ」の関係を整理してみましょう。多くのメーカーや量販店では、以下のような基準で製品を推奨しています。
| 身長範囲 | 推奨パター長さ | 詳細な特徴・傾向 |
|---|---|---|
| 160cm未満 | 32 – 33インチ | ジュニアゴルファー、小柄な女性、または極端に深い前傾姿勢でボールを覗き込むように構えるプレーヤーに適しています。 |
| 160cm – 170cm | 33インチ | 日本人男性の平均よりもやや小柄な層、あるいは腕が長く、直立状態で指先が膝近くまで達するような体型のプレーヤーにマッチします。 |
| 170cm – 180cm | 34インチ | 市場流通量が最も多く、選択肢が豊富な「標準スペック」。ただし、日本人の体格には長すぎるケースが多発しているゾーンでもあります。 |
| 180cm以上 | 35インチ | 長身の男性や、前傾を浅くして比較的棒立ちに近いスタイル(アップライトな構え)でパッティングを行う欧米的なスタイルのプレーヤー向け。 |
この表に基づけば、身長170cm〜180cmのボリュームゾーンにいる多くの日本人男性は「34インチ」が適正ということになります。しかし、これはあくまで「平均的な腕の長さ」で、「教科書通りの標準的な前傾角度」で構えた場合の理論値に過ぎません。
実際のフィッティング現場では、身長175cmの男性でも、腕が長い方であれば33インチの方が圧倒的に構えやすいというケースが頻繁に起こります。逆に、身長165cmでも腕が極端に短い方や、腰への負担を避けるために棒立ちに近いアドレスをとる方は、34インチや35インチが必要になることもあります。
また、注目すべきはプロゴルファーのトレンドです。PGAツアーなどのトッププロの世界では、身長180cmを超える大型選手であっても、33インチや33.5インチといった短めのパターを使用するケースが増えています。
これは、彼らが「腕を長く伸ばして、肩の真下でグリップする」ことでストロークの再現性を高めているためです。「身長が高い=長いパター」という単純な図式は、現代のゴルフ理論においては必ずしも正解ではないことを覚えておいてください。
女性の平均身長に合うパター長さの基準

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女性ゴルファーのパター選びは、男性以上に深刻な「長さのミスマッチ」が起きやすい問題です。日本のゴルフショップに並んでいるレディース用パターの多くは、32インチまたは33インチの設定が主流です。しかし、日本人女性の平均身長は約158cmであり、150cm台前半の方も多くいらっしゃいます。
身長150cm〜155cmの方にとって、33インチ(約84cm)という長さは、構造的に長すぎる可能性が非常に高いです。パターが長すぎると、どうしてもグリップ位置が高くなり、ヘッドを地面につけるためにはボールから遠く離れて立つ必要が出てきます。
結果として、脇が空いた不安定な構えになり、手首を使った「コネる」動きが出やすくなってしまいます。また、パターの総重量を持て余してしまい、距離感が合わない原因にもなります。
女性におすすめの選び方と対策
最近では、身長155cm前後の方にフィットしやすい32インチを標準ラインナップに加えるメーカーも増えてきました。もし、現在使っているパターで「構えにくい」「ヘッドが重い」と感じているなら、一度グリップを極端に短く(シャフトの近くまで)握ってみてください。
もしその方が打ちやすいなら、適正な長さはもっと短いということです。ショップでシャフトを1インチ程度カットしてもらうか、最初から32インチのモデルを探すことを強くおすすめします。無理に道具に体を合わせるのではなく、道具を自分の体格に合わせることが、上達への最短ルートです。
アドレスでボールが目の下にくる長さが正解

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身長という「目安」を超えて、自分だけの「正解」を見つけるための最も信頼できる指標。それは「アドレスした時の目の位置」です。パッティングの基本セオリーとして、「ボールは左目の真下、あるいは両目のラインの真下にセットする」という教えを聞いたことがある方も多いでしょう。これには明確な光学的な理由があります。
なぜ「目の真下」が重要なのか
ボールを目の真下に置くことで、ターゲットラインを真上から見下ろす形になり、「視差(パララックス)」を最小限に抑えることができます。これにより、カップまでのラインが歪まずに正確に見え、かつフェース面がターゲットに対して直角に向いているかどうかも判断しやすくなります。
長さが不適切な場合に起こるエラー
- パターが長すぎる場合:
物理的にグリップ位置が高くなるため、体とボールの距離が遠くなります。すると、目の位置がボールよりも手前(インサイド)に来てしまいます。斜めからボールを見ることになり、ラインの認識がズレやすくなるほか、トウ(パターの先)が浮き上がりやすく、左へのひっかけ(プル)のミスが出やすくなります。 - パターが短すぎる場合:
ボールに近づきすぎて、目の位置がボールを超えて外側(アウトサイド)に出てしまいます。いわゆる「被さる」形になり、極端なハンドダウンからヒールが浮きやすくなります。窮屈な姿勢からアウトサイド・インの軌道を誘発しやすく、スライス回転や押し出しのミスにつながります。
自然な前傾姿勢で構え、肩の力を抜いて腕をだらんと垂らした位置でグリップしたとき、ちょうどボールが左目の真下に来る長さ。これこそが、生体力学的に見たあなたの「適正長さ」です。鏡の前でアドレスしてみて、自分の目の位置を確認してみることから始めましょう。
手首から床までの距離で知る適正長さ
「目の真下」という基準に加えて、より客観的な数値で適正長さを知る方法があります。それが、PING(ピン)社などのフィッティングシステムでも採用されている「Wrist-to-Floor(リスト・トゥ・フロア=手首から床までの距離)」という計測メソッドです。身長だけではわからない「腕の長さ」という変数を考慮に入れることで、驚くほど精度の高い診断が可能になります。
Wrist-to-Floor計測の手順
- 普段ゴルフをする時と同じゴルフシューズを履きます。(ヒールの高さ分、数値が変わるため重要です)
- 平らな床の上で、足を肩幅程度に開いて直立します。
- 肩の力を完全に抜き、両腕を自然に体側に垂らします。
- その状態で、誰かに手伝ってもらい、手首のシワ(手首の付け根)から床までの垂直距離をメジャーで測ります。
この計測値が、あなたの適正パター長さを決定する「黄金の数値」となります。
- 数値が短い(腕が長い)人:
たとえ身長が180cmあっても、腕が長ければ手首の位置は低くなります。そのため、33インチや32インチといった短めのパターが適正となる可能性が高いです。 - 数値が長い(腕が短い)人:
身長が低くても、腕が短ければ手首の位置は高くなります。無理に短いパターを使うと前傾がきつくなりすぎるため、34インチ以上のパターが必要になるかもしれません。
このように、体格と道具のマッチングを客観的な数値で知ることは非常に重要です。「なんとなく」で選んでいたパターが、実は自分の体格に全く合っていなかったという事実に気づくきっかけになるはずです。より専門的なフィッティングを受けてみたい方は、以下の記事でPINGのフィッティングについて詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
PINGフィッティングで買わない選択はあり?料金と評判から検証
日本人の身長に34インチは長すぎる理由
ここで改めて、なぜ日本市場には「34インチ」がこれほど溢れているのか、そしてなぜそれが多くの日本人にとって「長すぎる」のか、その背景にある構造的な問題を指摘しておきます。
ゴルフ用品の規格の多くは、ゴルフ大国であるアメリカで確立されました。34インチや35インチという長さは、平均身長が約178cmあるアメリカ人成人男性を基準とした「グローバルスタンダード」です。これをそのまま日本市場に持ち込んだ結果、身長170cm前後の日本人にとっては、どうしてもオーバースペックになってしまうのです。
実際、公的な統計データを見てもその差は明らかです。(出典:厚生労働省『令和元年 国民健康・栄養調査報告』)によると、20歳以上の日本人男性の平均身長は約168cm〜171cm程度で推移しています。アメリカの基準から見れば、約10cm近く身長が低いわけですから、同じ道具を使って同じパフォーマンスが出せるはずがありません。
さらに、PGAツアープロのデータを見てみましょう。彼らは平均身長183cmという恵まれた体格を持っていますが、使用しているパターの長さの平均は33インチ〜34インチの間に収まっています。身長190cm近い選手があえて33インチを使うこともある世界です。
プロたちは「操作性」と「再現性」を極限まで追求した結果、身長に対して短めのパターを選んでいるのです。そう考えると、身長170cmのアマチュアゴルファーが、何の疑問も持たずに34インチを使っている状況は、明らかにミスマッチだと言わざるを得ません。
身長に合うパターの長さの測り方と調整テクニック

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自分に合う長さのイメージが湧いてきたところで、次はより実践的な「測り方」と「調整」のテクニックについて解説していきましょう。
カタログの数字だけでは分からない、ちょっとマニアックですが知っておくと絶対に損をしない知識です。
60度法など正しいパター長さの測り方
「パターの長さって、どこからどこまでを測るのが正解なの?」と疑問に思ったことはありませんか。実はこれ、メーカーや製造された年代によって測定基準が微妙に異なるため、非常にややこしい問題なのです。
現在、世界的な主流となっている測定方法は「60度法」と呼ばれるものです。
60度法とは?
クラブのソールを、地面から60度の角度を持つ定規(専用プレート)に当てます。その状態で、「水平面とプレートの交点」から「グリップエンドの頂点」までの距離を測る方法です。これはR&AやUSGAが推奨するルール上の測定法でもあり、ピン、テーラーメイド、キャロウェイなどの主要グローバルメーカーが採用しています。
一方で、かつての日本国内メーカー(ダンロップなど)や一部の工房では、「ヒールエンド法」という独自の基準が使われていました。これは、シャフト軸線の延長線上のヒール部分から測る方法です。この測定法の違いにより、同じ「34インチ」という表記でも、メーカーが違うと実測値で0.25〜0.5インチ(約6mm〜1.3cm)ほどのズレが生じることがあります。
ご自宅で専用の測定器なしに簡易的に測りたい場合は、以下の手順がおすすめです。
- 壁と床のコーナー(直角部分)を利用します。
- パターをアドレス時のライ角通りに構え、ヘッドのヒール部分を壁に押し当てます。
- シャフトに沿ってメジャーを伸ばし、グリップエンドの頂点までの距離を測ります。
- 日本のメジャーはcm表記が多いので、計測した数値を2.54で割ってインチ換算します。(例:86.4cm ÷ 2.54 = 34.01インチ)
厳密な60度法とは数ミリの誤差が出ますが、自分が今使っているパターが33インチなのか34インチなのかを判別するには十分な精度です。
グリップエンドを含めるか測り方の注意点
長さを測る際にもう一つ注意したい落とし穴が、グリップエンド(グリップのお尻の部分)の厚み、いわゆる「グリップキャップ」です。
多くのメーカーのカタログスペック(長さ表記)は、グリップを装着した状態での全長(グリップエンドの頂点まで)を表しています。しかし、このグリップエンドの厚みは、モデルによって5mm〜10mmほど異なります。薄い競技志向のグリップもあれば、柔らかさを重視した分厚いエンドを持つグリップもあります。
長さをカットして調整する場合のバランス変化

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「買ったパターが長すぎるから、34インチを33インチにカットして使いたい」と考える方も多いでしょう。これは非常に有効なカスタマイズですが、実行する前に必ず理解しておくべき物理的なデメリットがあります。それは「スイングウェイト(バランス)が劇的に軽くなる」ことです。
クラブのバランスは、支点からの距離で決まります。手元側(グリップ側)をカットして短くすると、ヘッドの効き具合を示すスイングウェイトは軽くなります。一般的に、パターを1インチ(約2.5cm)カットすると、バランスは約5〜6ポイントも低下します。例えば、元々「D2」だった適度な重さのパターが、「C6」くらいまで軽くなってしまうイメージです。
バランスが軽くなりすぎると、以下のような弊害が出やすくなります。
- ヘッドの重みを感じにくくなり、ストロークのリズムが早くなる。
- 手先でヒョイっと操作しやすくなり、パンチが入ったり緩んだりする。
- シャフトが短くなることで振動数(cpm)が上がり、打感が硬く感じるようになる。
対策としては、ソールに鉛を貼ってヘッド重量を足すのが基本です。1インチカット分のバランスを戻すには約10g〜12gの鉛が必要となり、見た目が少し悪くなるのが難点です。
最近では、グリップ側に重量を持たせる「カウンターバランス」という手法で、全体の慣性モーメントを高めて安定させる方法も人気です。シャフトカットによる詳細な調整方法については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
中尺・長尺パターの打ち方と作り方:普通のパターにグリップ交換する
腰への負担を減らす中尺パターの選択肢

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ここまで「短くすること」を中心に解説してきましたが、逆に「長くする」という選択肢が適正解となるケースもあります。特に、慢性的な腰痛に悩むゴルファーにおすすめしたいのが、中尺パターや長尺パターです。
短いパターを使うためには、どうしても前傾姿勢を深くする必要があります。これは腰への負担が大きく、長時間のラウンドや練習では辛いものです。38インチ〜42インチ程度の中尺パターであれば、前傾を浅くして、比較的棒立ちに近い楽な姿勢でストロークすることが可能になります。
また、最近ではPGAツアーのブライソン・デシャンボー選手やマット・クーチャー選手などが採用している「アームロック式」も注目されています。これは、長めのグリップを左腕の前腕部分に固定(ロック)して、手首の動きを封じるスタイルです。
ハンドファーストの形をキープしやすく、手首をこねてしまうミスや、イップスの症状を抑える効果が高いとされています。もし腰の痛みでゴルフが楽しめない、あるいはショートパットで手が動かなくなるといった悩みがあるなら、長さの概念をガラリと変えてみるのも一つの有効な解決策になるでしょう。
人気のオデッセイパターなども、中尺モデルやアームロック対応モデルをラインナップしています。歴代モデルの特徴と比較については、こちらの記事も参考にしてみてください。
歴代オデッセイパターを比較解説:人気のホワイトホット徹底分析
パターの長さと身長の関係や測り方の総まとめ
最後に、今回の記事の重要ポイントをまとめておきます。
パターの長さ選びにおいて、身長はあくまで出発点に過ぎません。最も優先すべきなのは、「自然なアドレスでボールが目の真下にくること」、そして「無理のない姿勢でストロークできること」です。
特に日本人男性の場合、既製品の34インチが長すぎるケースは非常に多く見受けられます。一度、ご自身のパターをいつもより2〜3センチ短く握って打ってみてください。「あれ?こっちの方が打ちやすいかも」「ヘッドの座りが良くなった」と感じたら、それがあなたにとっての適正長さのヒントです。
- 身長だけでパターを選ばず、アドレス時の「目の位置」と「腕の長さ(Wrist-to-Floor)」を最重要視する。
- 身長170cm前後の日本人男性なら、33インチも有力な選択肢として積極的に検討する。
- 長さを測るときは、メーカーによる基準(60度法など)の違いや、グリップエンドの厚みを考慮に入れる。
- シャフトカット調整を行う際は、バランスが軽くなるリスクを理解し、鉛などで適切な重量調整を行う。
たかが1インチ、されど1インチ。このわずかな長さの違いが、ボールの転がりを良くし、カップインの確率を高め、あなたのゴルフを劇的に変える可能性を秘めています。ぜひこの記事を参考に、自分だけのベストな一本を見つけて、次回のラウンドでベストスコア更新を目指してくださいね。

グリップ交換時の注意点
「グリップが古くなったから交換しよう」と安易に別の銘柄のグリップに替えると、シャフトを一切カットしていないのに、パターの全長が変わってしまうことがあります。特に、太めの「スーパーストローク」系や、カウンターバランス用の長いグリップに交換する際は、エンド部分が分厚くなる傾向があります。
「グリップを替えたら、なんとなくパターが長く感じるようになった」という違和感は、気のせいではなく物理的に長くなっているケースがほとんどです。長さを変えたくない場合は、交換するグリップのエンドの厚みもチェックする必要があります。